2021-01-01から1年間の記事一覧
人のやりとりがあると、その前後数時間、数十分はざわざわしてなかなか手をつけるべきことに戻れない。 中村祐子『マザリング 現代の母なる場所』(集英社)。この本を読んでいたせいもある。このときに、このひとが、このときに抱えていたことを、このくら…
それからは終焉が、長く果てしない別れがはじまることになるが、私にとってはそれが人生そのものになった。 それで、この、黄色い雨は何だったんだろう。 たいへんゆっくりだからときどき忘れてしまうけれど、今もわたしがみているこの風景は、わたしが果て…
放課後デイの先生が異動してしまう時期はいつもふいに来る。ほんとうにさみしい。心からたよりにしてしまうし、すべてこちらの状態を見せてしまうので。異動すると分かっているから、そのときそのとき、心からたよりにしてしまう。このひとのようにがんばろ…
黒やぎのお手紙届けばいいけれど何度もやり直せればいいけど * ふくらはぎかなしいくらい冷えるから綿・杭などを口で運んで 何もかも終わり 快楽に降る雨が嫌というほど光を吐けり 鬼のようにぼくがあつめた紐という紐たち 黒い箱にねむるよ どんな顔で居れ…
夜更けてひとがダンスの練習をつづける映像 しんとする夜 口笛でふらりと闇を切り裂いて分け入るように曲ははじまり 春の夜のえぐみをふくむ風でしたみずうみをつくるために動いた ない場所にないブランコが揺れている風重く降りてくれば六月 いつかわたしい…
少しずつでも時間をとれたらいい、窓の外で誰かが電話している。ビルの隙間にのぞくやわらかい大きな灰色の空。雲がはやい、橋の傍の窓。窓のこちらで顔を下げ、顔を上げたらさっきまでの灰色を撫でるように水色のもやもやした空気が動いている。水色が空を…
あまりはっきり気づけなかったけれど、たしかにそういう時期だと思うし、こういう感じで、こういう周期でこれからも行くんだと思う。波の大小を外にいるわたしが分かるはずがない。大小はない。 前よりも、こちらにいるわたしの理解で物事が進んでいないし、…
目をつむってものを見るときに温度が手がかりになる。青い舌は目でものを見ないときに使う目であり、ものをいわない舌でもある。そことここを行き来するのが舌なら、赤い舌よりも熱く抽象的な青い舌は、そこより遠く、ここより近くを分け入り行き来すること…
河田桟『くらやみに、馬といる』(カディブックス) 私がカディと向き合うとき、ヒト同士の関わりあいでは生まれない現象がそこに生じる。馬の認知のしかたはヒトと違うから、おのずと私はヒトであるだけの私ではなくなる。カディは馬であるだけの馬でなくな…
人間と居ると光が要る。動物と居るときは要らない。ほかのふたりがキャンプにいって家にいない。眩しすぎると思って暗くして過ごした。 今、夏の終わりなんだと思い出す。
もうこの建物にはわたしのほかに誰もいない。いろいろあったけれど最後のほうはみんなしめし合わせたようにばたばたっと出ていった。 右腕の内側にできた小さな赤い穴から秋が入ってきている。じゅくじゅくした液体がかたまっている。すこしにおうのだろう、…
終わりが見えてくるタイミングで入れ替わるように次の仕事なりやるべきことが来る。この感じがフリーになった頃から揺らぎながら続いているのは健康的だと思う。ひとつ大きな駆け抜けるような仕事が落ち着く頃、やりたかった仕事、憧れていた仕事が入ってき…
ゴミだらけの庭の話を読んだ。思い出す子がいる。何かにつけて思い出す子、少し思い出しすぎる子。とくべつに仲が良かったわけでもないし、それどころか、わたしとあの子とで心を通わせたこともなかった。何かの感傷か、何かのうったえか、最近は、自分の記…
ひとつ終わるとひとつ始まる。またひとつ後回しになって、同じことをやっているだけだと思う。終わったと思ったことが別の仕方であらわれるだけ。それをならしていく役割がはたして必要なのか、それはわたしなのかどうか。わたしでなくてもいいし、この役割…
すこし休みたくなった。夜気に冷やされた質素な椅子と青く塗られた壁をここに置いて、そのひとは水を飲みに行った。たくさん踊るから、たくさん水が必要なのだ。踊るひとたちは生きることが身体に囚われることだということを知り抜いている、という。囚われ…
ジョージナ・クリーグ 中山ゆかり・訳『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』(フィルムアート社) そうだよね、それはそうなるよね。なぜこの関係性に思い至らなかったのだろう、生きていくために自分のもっていないもの…
関正樹 高岡健『発達障害をめぐる世界の話をしよう よくある99の質問と9つのコラム』(批評社) むかしの自分の態度や判断の答え合わせが自動的にはじまっているように、感じながら読んでいた。芯になるのはこの考え方でよかった、ここまではこのとき出来た…
背の穴をあけっぱなしで寝ているの 穴をとじたら死ぬの、助かるの (「西瓜」創刊号より) 短歌の同人誌「西瓜」は3か月に一回発行されます。 創刊号が発行されて、のろのろしている間に多くのひとの手元に行き渡り、2号、3号、4号…のこともどんどん進んでい…
基本的な工夫をいくつかやって、効果があって、よかった。反応は直接でなくべつのところで全体的に感じるようになった。ふとした行動や話す量や反応のスピード感など。 B7、ほんとうはもう少しだけ大きめがいいなと思いつつ、独立した頃からずっとB7のメモパ…
そういう行為を、スタンスを、どうも何かが引っかかってゆるせないと感じるのだな、わたしは、と自覚するまで時間がかかる。自分がもつゆるせない感じと、たとえば法律は、ほかの誰かの言うことは、ベクトルが違うという意味でぜんぜん関係ないんだなと実感…
眠くて眠くて眠る時間がすごく多い。まだまだ眠れる。 なんとなく具体的に、この状況をこうしていかないと無理、というのがながくあって、今のようにきっと悩むだろうとある程度わかってはじめたことだった。はじめるときはそうするしかなかったから、今この…
SIRUPのライブに行ってきた。ああ、ああ、嬉しい。 声を出さないように、隣の人に当たらないように。人に体が触れないように、できるだけ動きが自己完結するように踊ることを考えながら聴いていたら、円を描いてひとつの歌が、もとのところにきゅっと閉じて…
天満橋のほうに出たら、帰りにいつも迷ってしまう。 自分が関わってきたお仕事について話す機会があって、急いで振り返りと意味づけをしている。自分自身の態度や価値観の振り返りと意味づけをすることと同じことだから、いろいろなところに思いが及んでしま…
黄色の本と紫の本2冊ずつ、ずっと速い時間のなかにいるから出会えない、必ずわたしの先に逝ってしまうものの白眼、白眼をその向かい側に寝転がって見ていた。肉をはさんだなんとかサンド、右手では食べづらいとはじめて知った。右ききの人が左手で食べるとき…
ディスタンスがくっと途切れる。相手のタイミングがそうだったから仕方なかったのだろうけれど(相手にとって)、肩をたたかれてとても嫌だった。ディスタンス、のおかげでこういうことがぐっと減っていたから不意を突かれたし、ほんとうにばかにされている…
ぺらぺらになってあなたが死んでゆく夢をみたのよ薄く汚れて 消えたさが霧にながれて足下にまといつく冬 誰の消えたさ この塔のうちがわは時間が止まる ときどき、こうやって、息をする (「舟」第38号から、はじめの3首)
きみが死ぬものがたり隣りに読めば目のふちの赤は何に通じる 馬のほか誰も辺りにいない夜 布を裁つとき呼気長くして おおかみの濡れたにおいの居残る夜 と思えばふいに部屋がすずしい 玄関におそろしく黄色い花が大きく咲いて揺れてしまうよ 黄の花に照らさ…
ふっと、タイミングが重なってひといきつける。溜めに溜めた用事をつめこんで役所。義務でないことに手をつけることは出来ず、ここでもうくたくたになってしまう、いつも。 いつも、何を見ても、いかに詳しく事実に即した内容であっても、いつもそう、比較対…
このまま行けばどうなるかわかること、いくつか。このまま行くわけにいかないしもっと良いバランスを思っている、それぞれの思惑のなかで充分わかっているからこのまま行かない。それでももしかしたらこのまま行ってしまうようなこともある。そのときは、そ…
磯野真穂『なぜふつうに食べられないのか』(春秋社)。 読み終えて本を閉じたときも、タイトルが大きく目に入る。タイトルの意味がやっとわかるし、大きく配置している意味もやっとわかる。読み終えた目に入ってくるタイトルの見え方が変わっていることに気…