日記

とみいえひろこ/日記

森本淳生 ジル・フィリップ/編『マルグリット・デュラス〈声〉の幻前』

対象αとしての声は、発話されたシニフィアンの連鎖としてのパロールには還元されない。ラカンが声を対象αと呼ぶのは、声というものが、私たちの欲望がそれへと引っかかることがある、取り替えのきかない(かけがえのない)対象でありうるからだ。とすれば、…

2024.03.09

アルモドバル監督の映画を、続けて観た。ひとつはいつものように途中で話のつながりが分からなくなってしまって、また観ようと思う。 『オール・アバウト・マイ・マザー』、また観たい、いつか。いつもこの人のつくるものは、複雑で、多面的で、多層的で、襞…

2024.03.09

・はじめて、通して6分台で走れたので嬉しい。姿勢のことだけ気にして走った。 2月は腰痛いのと寒いのとで走らずじまいだった。休んでも、やめずにこつこつ続けたい。自分の体のことがよく分かるから。 ・自分が抱えているはず、べき、の、あらゆる苛立ちは…

2024.03.08

そんな時、怒りを爆発させた長男はストライキを始めた。家族は、長男の怒りでようやく分った。障がい者の長男が一家にとってどんなに大切な存在であったのかを。長男がいなければ自分たちの人生もない、ということに家族はようやく気づいたのだった。 普玄 …

2024.03.05

普玄 倉持リツコ/訳『痛むだろう、指が』。売ってしまってもう手元にない本。 少しずつそれぞれの役割がずれている、ずらされている、という感じがこちらに残る、それも心に残る理由のひとつだったと今になって思う。役割がもう少しでもずれると大きく傾い…

2024.03.05

深く重く汝の聞こえをり現実の対岸よりの声は柔媚に 汝・な 悲哀から時間が生れるすこししてすこしづつだが花が咲きゆく 生・あ 岡井隆『臓器(オルガン)』 苦手だったけれど突然大好きになって(苦手だったいくつかのところを、突然「ゆるせた」感じだと思…

2024.03.03

『瞳をとじて』ビクトル・エリセ/監督。長い映画だった。思ったことを書いておかないとどんどん忘れてしまう。でも、顔をあれだけ映されたら、顔のこと、顔を見たこと、受けた印象、言葉にも言葉以前のものにもならないあの時間の感じは憶えている。憶えて…

2024.03.02

『我と汝』、大事に思って、数ページずつ読んでいる。 妙に時間がかかってしまうことは、とっても多い。私が、いい、と思うことは少ない。きのうは必要があって場違いだと感じるところに行き、分かれ道の流れによってこういう生き方もあったんだと、想像して…

藤本玲未『オーロラのお針子』

雪原に無音がにじむほんとうはさみしかったの片腕なくて ほんとうは、ではじまることは愚痴にしかならないからさ手紙燃やすね 「ほんとうは」という言葉ほど、ほんとうは信用できないものはないはず。それでもたぶん、「ほんとうは」と告げた口から引き出さ…

『タロウのバカ』大森立嗣/監督

最初からきつい、ずっとしんどい映画だった。光の感じと、衣裳がいいなと思って、服の感じを見ていたら、「穴」が心に残った。穴のあいたセーター、首に巻いた黒いリボン。傷口がどんどん開いて、最後はほとんど穴のタンクトップ。そう思うと、川で雨が降っ…

2024.02.27

ほとんど毎晩、ブランコを漕ぐのをわたしだけ見ている。今夜はけっこう長いので、一度帰って見に行った。寒いけれどもうコートなしでぎりぎり行けるくらいで、小さな小さな白い花がいくつか咲いていた、と、出るときに見たのを思い出しながら。今夜は、余裕…

2024.02.26

帰りの電車のなか、という時間を持ったことも久しぶりで、なんとなく、わかってきたような気がする。べつに自分はとくに何も変わらないし、なんとなくわかっていたことを確認しただけだけれど。でも、確認する、ということをわたしはずっとしたかったと思う…

2024.02.24

そうではなくて、ひとつひとつ現れていることのほうがわたしには信頼できる。はずだ。その現れ方や、なぜその表現がとられたか、それを今目の前にいる私がどう受け取っているか、どう受け取ってゆくことができそうか、という間のところに、何らかの名前がつ…

2024.02.24

『愛情萬歳』ツァイ・ミンリャン/監督。流し見してよく分からなくてもう1回見て、分からないまま。糸を引くような感じで、数日後に顔の切ない感じや、何もないひとりきりの箱の感じを思い出す。見たものが内側に入っていて、内側から思い出す。 水、流れる…

2024.02.23

確定申告が提出できそうで、自分で思っていたよりかなり、ものすごくがんばっているじゃないかと思った。あとで、すこしはちゃんと評価分析したい。そういう、予習復習の時間をどうにかもちたい。 2月のこの時期はとくに面談などの多い期間でもあって、うま…

2024.02.22

できることはやって、考えられることは考えて、伝わることは伝わって、それらがどこまでなのか、どの程度なのか、自分の位置確認や現時点の限界、つまり、境界線がなんとなくつくれて、そうやってつくる方法を理解しつつあって、あとは、わたしがほんとうに…

2024.02.21

『星になるまで』ツォン・チェン/監督、風呂本惇子『アメリカ黒人文学とフォークロア』など。 すごく迷う。

野田かおり『風を待つ日の』

歌集の構成として、「季節」というルールのなかをひとめぐりして、春から春へかえってくるつくりが意識されている。と話されていた。 なら、かえってきた春、とりあえずたどりついたもうひとつの春は、決められたルール、与えられた枠組みを、少し超えたとこ…

2024.02.20

最近はすこしだけ離れたところへ買い物に行くから、考えのつづきを何度も戻って考えなおす、噛みしめなおす時間が増えているのかもしれない。自転車を漕ぎながら、信号待ちをしながら。 二月というのにあたたかく、だから涼しく感じたりして、なんでもありで…

2024.02.18

見ていて(見えずにいて。見る落ち着きや時間や、力のなさから出られないという実感にとらわれる、そのなかにずっといて)最近思うのは、 ・しない時間、できないでいる時間、黙る時間、何も進まない伝わらない分からない時間、経過こそ大事だというところを…

2024.02.15

人と違う目の色をしている君は人とは違う世界が見えてるのかなぁ KID FRESINO/by her feat. 茂千代 www.youtube.com これではなくて、 行けないかな、行かないでおこうかな、行かなかった/行けなかったことを覚えておこうと思った朝だった。

2024.02.13

難しすぎて泣いていた。 言葉でならいくらでも言える。ひとつひとつの、わたしの目の前のことを奪われ、材料にされ、極端にされ、そちらの都合に合った事例にされ、何かのポジショントークに使われる、代理の武器にされることがけっこうほとんどではないの。…

2024.02.07

おもわずさしのべてぬぐったちなまぐさいゆびさきに それはひかりよりまぶしくかがやいて ねたみはついに羞恥となって心底ふかくしずんでいった (「りんごの死」『征矢泰子詩集』から) 結局のところ、まわりに大人はひとりもいない。そもそも自分が大人じ…

2024.02.06

吐き気と痛みで気持ち悪かったので、葛根湯を飲んでたくさん寝た数日だった。何度も寝て、何度も今日を分ける。体調が悪くなってやっとからだの後ろ側をこわばらせている癖に気づく。数日鏡を見なかった気がする。優先順位のすごく高いものだけに集中した数…

2024.02.04

どうやって心を広くもつか、疲れや抱えられる量との関係だけで考えていたら、無理なものは無理になってしまう。ここで、クラウドに預ける、眺める、離れてひとごととして扱う、というやり方が出てくる。今もまだべったりくっついているのか、欲の洗練されて…

2024.02.03

はじめから、何も伝えることができていなかったし、それは、それぞれの立場がもともと見ているもの抱えているもの根本的な目的においているものというのを、私が何も分かっていなかったから、おさえていなかったからだと思った週だった。そういうのを分かる…

2024.01.31

台所の灯り、長く真暗なままだったのが数日前から点くようになり点けることにした。明るくなったら見えるものがたくさんあり、こんなに、こんなだったんだと実感している。何度めかの実感。白日のもとに晒されたもの、晒された無理さ、動けなさ。 食べて、寝…

『山の焚火』フレディ・M・ムーラー/監督

『山の焚火』フレディ・M・ムーラー/監督 大きなものを奪われた後にいるような、ここにある何も見ていないような、「祈る」ようにも見える、そういう目つきの顔。その内側で何がどう動いているのか、ここからは何も見えない、わからない。どんな意味もその…

2024.01.31

エピソードが語られ、短い解説があって、わたしは納得いかない。まったく納得いかない。でもそういうもので、人が外から理解するときは、うまく類型化を組み合わせて自分のために理解する。どこまでいってもそれだけで、エピソード自体が、語ったこと自体が…

2024.01.29

金井美恵子『小説を読む、ことばを書く』、霜山徳爾『人間の限界』、二階堂祐子 『生きられた障害』など。『生きられた障害』もたくさんページを折っている。 代わりに受け止め、引き受けさせることについて。私の迷いが深い(深まっていない。深まっていく…